死者40人を出した中国浙江省温州市(せっこうしょうおんしゅうし)の高速鉄道事故から8月23日で1カ月。鉄道省が事故車両の一部を現場に埋めた事実を瞬く間に国民に伝えたのは短文投稿サイト「ツイッター」の中国版「微博(ウェイボ)」だった。直後に巻き起こった「証拠隠滅」などの激しい当局批判。中国人の識者からは「国民に『知る権利』という概念が根付いた。メディアも含め社会が変わる契機になる可能性はある」との見方が出ている。
国民の怒りに火を付けたのは事故翌日の24日夜に開かれた鉄道省の王勇平報道官(当時)の記者会見。「なぜ埋めたのか。証拠隠滅か」との質問に対し、救出作業の円滑化を図るためと釈明。運行再開を急ぎ早々と捜索作業が打ち切られた後に2歳の女児が救出されたことについては「奇跡だ」。やりとりは直ちに微博で伝えられ「人命軽視」などの批判を呼んだ。
共産党の一党独裁体制を敷く中国のメディアは当局の統制下に置かれ、記者会見で当局に都合の悪いやりとりがあっても、カットされ国民には伝わらないのが通常。今回は、微博という新たな情報伝達媒体と国民の広範な批判により、当局監視がかつてなく強まった。